おいらの毎日

上京したイキり大学生の毎日を描いたドキュメンタリー

知らぬが仏を学ぼうね。

1ヶ月前、都内で飲んでいて終電で帰った時の話だ。

日曜日の終電は色んな人が乗ってくる。

 

飲みすぎで今にも口から胃液の津波を起こしそうな人。

残業という名のモンスターと闘い勝利し、HPミリ残りで帰還する人。 

明日、学校がある事を思い出し、急に死にそうな顔になる大学生。横でそれをあざ笑う月曜全休の友人。

 

 そんな中、僕は一人で座り、携帯を触っていた。

ちなみに僕は月曜全休で優越感にズブズブ浸っていた。

 

左側にちょっとハゲた小太りの飲み帰りであろうおじさんが座った。おじさんは臭かった。いや臭すぎた。身体中の全ての悪と呼ばれる匂いが僕を襲った。悪意の塊そのものだった。

 

しかし我慢した。言ったところでおじさんが心に傷を負うだけだからだ。

 

いやでも教えてあげるのが正義ではないのかともう一人の僕が囁いたが僕は動かない。それを止めたのが恐怖心という感情だった。

 

そんなことを考えてるうちに席は埋まり、電車は動き出した。

 

しばらくして目をつぶって音楽を聴いていると、右肩に違和感を覚えた。人の頭が確実に僕の右肩に乗っている。

 

電車が動く前、左側のおじさんに意識が持っていかれていたし、すぐイヤフォンして目をつぶっていたから右側に誰が座ったかを確認していなかった。

 

しかし、全然嫌な気分にはならなかった。

なぜならいい匂いがしたからだ。

高級な香水の香り。

 

間違いない。これは女の人だ。

 

女の人が残業終わりで疲れ果て僕の肩で寝ている。

左側のおじさんの事はもうすっかり忘れていた。

 

次の駅まで僕は目を開けず、優越感に浸りつつどんな女の人かを想像して当てるという奇天烈な一人遊びをした。

 

 

寝ている彼女の髪がなびいている感じはない。

肩に乗っている頭の重さ。

そして高級な香水の香り。

 

 

間違いない、、

髪はショートで丸顔の美人OLだ!!

僕は答えを導き出した。

 

そして次の駅につき電車が止まり、答え合せの時間がやってきた。

 

 

ゆっくり目を開き、ドキドキしながら右側にいる人を確認した。

 

 

ハゲたおじさんが座っていた。

 

いやおかしい。ハゲたおじさんはさっき見たはず。

 

僕は左側を確認した。

 

悪臭を放つハゲたおじさんが座っていた。

 

もう一度右側を確認した。

 

高級な匂いを放つハゲたおじさんが座っていた。 

 

 

僕の想像のショートで美人なOLは、現実ではベリーベリーベリーショートでいい匂いのするおじさんだった。

 

僕はずっとおじさんに挟まれていたのだ。

オセロで言うと、僕もハゲたおじさんになっているところだ。

スロットで言うと、僕がハゲたおじさんだったら大当たりのところだ。

 

 

想像と現実はこうも違うものなのか。

知らぬが仏ってよく出来た言葉だなぁ。

 

と身に染みて感じながら最寄駅まで肩を貸して寝かせてあげた。お仕事お疲れ様でした。

 

 

 

 

 

 

以上解散。