ハエに道徳を習った男。
今日近所を散歩していたら不思議なことが起きた。
二十年間生きてきて初めての出来事に驚きを隠せなかった。
今から言う話は決して嘘ではない。
昼頃近くの川辺を散歩しているとき、急に視界にハエが入ってきた。
僕はトマトと虫は本当に嫌いなのでミニパニックになり、道の右側にパッと避けた。
すると、そのハエが僕の前で一時停止して僕と全く同じタイミングで右側に避けたのだ。
当然次は左側に避けるとハエも左側に避けた。
その時点でミニパニックからきちんとしたパニックになった僕は唖然としていると。
何もなかったかのようにハエは横を通り過ぎて消えていった。
そう。ハエが気を遣って道を譲ろうとしてきたのだ。
これには本当に衝撃を受けた。
たまに道で人とすれ違うときお互いが道を譲ろうとして横にズレ
「あ、すいません。」
ってなる感じをまさか虫ですることになるなんて思いもしなかった。
しかもハエで。
気を遣えるハエなんているんだなぁ。
あのハエと友達になりたい。
友達になったら
僕「今日どこ行く?」
ハエ「どこでもいいよ!君が決めなよ!」
僕「いやいやハエ君が決めなよ〜」
っていう平和なやり取りが行われるのが目に浮かぶ。
あの子はハエの世界でも他人優先のいい子なんだろうな。しかも人間にも優しい。絶対モテる。
今思うとハエとすれ違う時、ハエが小さな声で
「あ、すいません」
って言っていた気さえする。
僕も、もっと優しくどんな人にも気を遣える人間になろうと小さな虫風情に教わった話。
以上。解散。