また奴がやってきた。
今年も奴は小さい7畳の部屋にやってきた。
奴に捕まると2度と外には出れられない。
奴の特徴は4足歩行で大きな皮膚に覆われている。
その皮膚は個体差があるようで僕の部屋にやってきたのは茶色で所々に点々がある恐ろしい色をしている。いわゆる水玉模様というやつだ。
そしてなんと言っても体の中心にあるであろう発熱器官。
ここが1番恐ろしい箇所で、奴は長い尻尾を部屋の小さな穴に入れることで常時熱を発している。
最近の発達した研究でその正体は交尾だと分かったらしい。
この交尾中異様なフェロモンが空気中に散布されるらしく、人はそのフェロモンを嗅いでしまうと奴の体内に吸い込まれるように入ってしまうのだ。
これにより去年の冬の殆どを部屋で過ごすという散々な結果になった人も多いだろう。
僕のその中の1人だ。
ただ奴の体内はなんというか不思議な気分になってしまう。程よい暖かみで高揚感が広がる。
そして、もうこいつ無しではいられないと思わせる中毒性まである。相当危険だ。
田舎にいくと奴は姿を少しだけ姿を変化させている。
僕のお婆ちゃん家では頭から何やらオレンジ色の実を何個も生やしていた。確か名はみかん。
残念なことにこのみかんにも中毒性があり、どんだけ満腹な状態でも手が伸びてしまう。
正月太り。この言葉の権化はそこにあるのだ。
気を抜いてしまうと奴の術中にハマってしまう。今年こそ奴に勝たなければ。
そのようにコタツの中で決心したのであった。
以上。解散。